がん治療の便秘の副作用に効果!新薬スインプロイク錠について薬剤師が解説

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がん治療の便秘の副作用に効果!新薬スインプロイク錠について薬剤師が解説

 

2017年6月に便秘の新薬のスインプロイク錠が発売されました。

 

スインプロイク錠は少し特殊な便秘薬で、治療対象の病名が『オピオイド誘発性便秘症』です。

 

これは、オピオイドという系統の薬の副作用で起こる便秘のことです。

 

 

オピオイドにはいくつか種類があり、特定の種類は強力な鎮痛効果を発揮するのでがんなどの体に強い痛みを起こす病気の痛み止めの薬として使われています。

 

しかし、オピオイドには便秘の副作用が起こりやすい欠点があり、便秘になってしまったら従来の便秘薬で対処するしかありませんでした。

 

こちらで紹介するスインプロイク錠は、オピオイドの服用中に起こる便秘に対して新しい効き方で治す薬です。


 

目次:

 

医療用便秘薬の種類とそれぞれの特徴について薬剤師が解説!

医療用便秘薬の種類一覧|酸化マグネシウムやプルゼニド、ビオフェルミンなど

 

 

スインプロイク錠の概要

スインプロイク錠について

 

スインプロイク錠は日本の製薬メーカーの塩野義製薬が開発した国産の新薬です。

 

日本では2017年3月に承認され、同6月に発売されました。

 

スインプロイクは販売名で、含まれる成分の名前はナルデメジンです。

 

 

スインプロイクの英語のつづりはSymproicです。

 

スインプロイクという名前は、スインプロイク錠の効果である「オピオイド誘発性の便秘症を抑える」の英訳「Control Symptoms of Opioid-Induced Constipation」を略してSymproicとつけられました。

 

 

ここで、スインプロイク錠の効果のキーワードであるオピオイドについて少し触れておきます。

 

効果の『オピオイドと便秘』について

 

オピオイドには10種類以上の成分があります。

 

オピオイドのほとんどが痛み止めの薬として使われていて『オピオイド鎮痛薬』とも呼ぶことがあります。

 

例えば、一般的な鎮痛薬より強い鎮痛効果があるトラマールやトラムセット、鎮痛効果が非常に強いモルヒネやフェンタニルなどです。

 

なお、痛み止め以外のオピオイドには、咳止めのコデイン、モルヒネが効きすぎた時の解毒剤ナロキソンがあります。

 

 

効果が強いオピオイド鎮痛薬は、一般的な鎮痛薬がなかなか効かないような強く続く痛みに使われます。

 

以前はオピオイド鎮痛薬といえばがんの痛みの特効薬でしたが、最近では成分によっては長く続く体の痛み、例えば、首の痛み、腰痛、神経痛などにも広く使われるようになりました。

 

 

オピオイド鎮痛薬は痛みに関しての効果は優れていますが、欠点に副作用があります。

 

オピオイド鎮痛薬の副作用には便秘、吐き気、眠気などがありますが、特に便秘の副作用オピオイド鎮痛薬を使っている方の半数〜8割に起こるといわれています。

 

咳止めなどでオピオイドを短い間だけ服用するならあまり問題になりません。

 

しかし、痛み止めとしてオピオイド鎮痛薬を使う場合は、痛みが長く続く分オピオイド鎮痛薬も長期にわたって使います。

 

つまり、オピオイド鎮痛薬を続けている間はずっと便秘がちなので、患者の負担も大きいのがやっかいな点なのです。

 

 

このことから、オピオイド鎮痛薬を服用するときは便秘対策が必須と言ってもいいくらい大切となってきます。

 

この、オピオイド鎮痛薬を含むオピオイド全般で起こる便秘に効果を発揮する薬がスインプロイク錠です。

 

特にスインプロイク錠が治療対象にするのは、オピオイドの中でも長く服用する必要のあるオピオイド鎮痛薬によって起きる便秘です。

 

従来の便秘薬との違い

 

スインプロイク錠の従来の便秘薬との違いは、オピオイドの副作用で起こる便秘だけに効く、という点です。

 

逆に言うと、便秘の症状がある方全員に効くわけではありません

 

 

以下の表では、オピオイドの服用中に便秘が起こった場合の治療薬をまとめてみました。

 

薬の名前 特長 注意点
スインプロイク オピオイドで起こる便秘だけに特化 左記以外に効かない
注意点が他の薬より少ない
酸化マグネシウム
マグミット
腸を刺激しないのでお腹が痛くなりにくい 高齢者と腎臓が良くない方は使用注意
プルゼニド
アローゼン
センノシド
腸を刺激する
効果が強い
腹痛に注意
連用すると効きにくくなる(耐性)
ラキソベロン 腸を刺激する
効果が強い
液体の薬がある
腹痛に注意
耐性は少ないが起こる可能性あり

 

スインプロイク錠は、従来の便秘薬より注意すべき点が少ないのが特長です。

 

ただ、発売したばかりの新薬なので、注意点が治験で判明したものだけである、ということも押さえておかなくてはいけません。

 

なお、便秘の対策には、薬以外にもマッサージ、水分補給、食事内容を見直すなど日常生活の中でできることもあります。

 

剤形・薬価・パッケージ

 

スインプロイク錠は錠剤だけのラインナップです。

 

粉薬や液体の薬はありません。

 

 

スインプロイク錠1錠には成分のナルデメジンが0.2mg含まれています。

 

外見は黄色い錠剤で、直径は6.5mmで大きすぎず飲みこみやすいサイズです。

 

錠剤はフィルムコーティングされていて味やにおいは特にありません。

 

1錠あたりの薬価は272.10円です。

 

医療機関向けのパッケージには14錠包装と50錠包装があります。

 

スインプロイク錠が処方される人は

 

オピオイド鎮痛薬にはトラマール、トラムセット、フェンタニル、モルヒネなどたくさんの種類があります。

 

現在オピオイド鎮痛薬を服用中の方で、オピオイド鎮痛薬を始めてから便秘に悩まされるようになった方にスインプロイク錠がこれから処方される可能性があります。

 

 

また、これまでオピオイド鎮痛薬の副作用で起こる便秘の対策は、マッサージや水分補給などで対策するか、従来の便秘薬を使うしかありませんでした。

 

しかし、高齢や体質が理由で従来の便秘薬が体に合わない方もいます。

 

そういった方にスインプロイク錠が処方されることも考えられます。

 

 

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スインプロイク錠の効果について

なぜオピオイドで起こる便秘だけに効くのか

 

スインプロイク錠が「オピオイドの副作用で起こる便秘だけ」に効くわけを解説します。

 

それは、オピオイドの腸での働きに関係があります。

 

 

そもそも、体の中でオピオイドはいろいろな所に働きかけます。

 

ここでは、オピオイドを服用したときの鎮痛効果と腸での働きだけに絞って説明します。

 

オピオイドは、脳と神経の痛みを伝える経路に働きかけて体の痛みを取り除きます。

 

しかし、オピオイドは腸の神経にも同時に働きかけて、腸の動きを鈍らせてしまう作用ももっています。

 

腸の動きが鈍ると、自然なお通じが起こりにくくなります。

 

それに、腸が動かないと腸内に便がとどまったままになり、便の水分がどんどん吸われて固く出しにくい便がたまってしまいます。

 

しかも、オピオイドで起こる便秘は体が慣れて自然に治るということがほぼありません。

 

『便が固い、溜まる、出ない』の悪循環で便秘が悪化してしまうのです。

 

 

スインプロイク錠は、オピオイドの腸への作用だけをブロックします。

 

その際、鎮痛効果へは影響しないとされています。

 

オピオイドを服用していて便秘になった方がスインプロイク錠を一緒に服用すれば、腸の動きはオピオイド鎮痛薬に邪魔されないいつもの動きのままです。

 

結果、無理に力を入れない自然なお通じに近づくため便秘が解消されるのです。

 

 

以上のように、スインプロイク錠はオピオイドが原因で起こる便秘の治療薬ですので、オピオイドを服用していない方が服用しても何も効果がありません

 

効果が出るまでの時間

 

スインプロイク錠を初めて服用したときは数時間〜半日で効果が出ると考えられます。

 

スインプロイク錠の治験では、初めて服用してから効果が出るまでの時間は97人中95%の方で3〜7.58時間という結果でした。

 

 

しかし、初回以降の効果が出るまでの時間は他にデータがありませんでした。

 

それはスインプロイク錠の効き方にも理由があります。

 

スインプロイク錠は、オピオイド鎮痛薬で鈍った腸の動きを取り戻してお通じを良くします。

 

服用してから効果が出るまでの時間はその人の腸の動き方によるため、個人差が大きいのです。

 

従来の便秘薬のように服用したらすぐ便秘を解消、というより、長い目で見ての便秘の予防のために服用する薬がスインプロイク錠の特長、といえます。

 

 

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用法・用量について

スインプロイク錠は通常、成人は1日1回1錠服用する薬です。

 

1日の中でいつ服用するかは特に決められていませんが、医師の指示がある場合はその通りに服用してください。

 

スインプロイク錠は、オピオイドの服用を続けている間は毎日服用する必要があります。

 

逆に、オピオイドをなんらかの事情で取りやめる場合は、スインプロイク錠も一緒にやめることになります。

 

 

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注意点

副作用

 

スインプロイク錠でよく起こりうる副作用は、下痢、腹痛、吐き気、だるさ、食欲不振です。

 

特に、初めて服用したときに下痢の副作用が起こりやすいので、体調に気を付けてください。

 

スインプロイク錠の副作用で下痢になっても少しずつ良くなる場合が多いですが、激しい下痢がおさまらないときは必ずかかりつけの医師や薬剤師へ相談してください。

 

禁忌・慎重投与にあたるケース

 

スインプロイク錠は、消化管閉塞を起こしている方、その疑いや既往歴のある方は服用できません。

 

海外でスインプロイクに似た薬で消化管に穴が開いてしまった事例があったためです。

 

がんが原因で消化管閉塞が起こる恐れがあるので、医療機関側での見極めが重要です。

 

 

同じ理由で、消化管の壁があまり強くないと考えられる症状がある方(消化管潰瘍、がんの転移、クローン病など)はスインプロイク錠の服用は慎重に様子を見る必要があります。

 

また、脳腫瘍がある方はスインプロイク錠が脳に作用してオピオイドの鎮痛効果に影響する可能性があるため、同じく慎重に様子を見ます。

 

妊婦、授乳中、高齢者、子供の服用

 

高齢者がスインプロイク錠を服用するときは、体調に応じて経過に注意を払ってください

 

薬の代謝機能が下がりつつある高齢の方は、副作用が出やすくなる恐れがあるためです。

 

 

また、スインプロイク錠の妊娠中の方と子供への安全性は確立していないため、主治医とよく相談してください。

 

授乳中の方は、スインプロイク錠を服用中の間は授乳を避けてください。

 

食べ合わせ、飲み合わせ

 

スインプロイク錠と食べ合わせのよくない食べ物やサプリメントは今のところありません。

 

しかし、一部の薬でスインプロイク錠と相性がよくないものがあります。

 

例えば、抗真菌剤のイトリゾールやジフルカン、免疫抑制剤のネオーラル、結核の薬のリファンピシンなどです。

 

スインプロイク錠が処方されている医療機関以外にかかるときは、おくすり手帳を提示して飲み合わせをチェックしてもらうと安心です。

 

市販の便秘薬も一緒に使っていい?

 

スインプロイク錠を服用していても便秘が改善せず、次の受診日はまだ先だから市販の便秘薬を一緒に試してみたい、という方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、市販薬の成分によっては、現在の病状や今服用している薬に合わないものがあるかもしれません。

 

ご自分の判断で市販薬を試す前に、まずはかかりつけの医師や薬剤師へその旨を相談してください。

 

 

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その他情報

ジェネリックの存在

 

スインプロイク錠は新薬ですので、後発医薬品(ジェネリック)はありません。

 

海外での状況

 

アメリカでは、スインプロイク錠はSymproicの名前で2017年中に発売予定です。

 

ただし、アメリカでは効果が「成人の非がん性慢性疼痛の患者」に限定されています。

 

言い換えると、オピオイド鎮痛薬使用中のがん患者で便秘になってしまった場合は、アメリカではスインプロイク錠は使えません。

 

理由はおそらくですが、がん患者を対象とした治験が行われたのが日本(一部の治験では日本と韓国)だったためです。

 

スインプロイク錠が欧米人のオピオイド鎮痛薬使用中のがん患者でも効果があるかどうか、鎮痛効果に影響ないかどうか、などのデータが十分に集まらなかったからと考えられます。

 

なお、アメリカでは、オピオイド鎮痛薬ががんの痛みに限らずいろいろな体の痛みに対して日本よりはるかに多くの方に使われています。

 

オピオイド鎮痛薬による便秘に悩む方はアメリカでも多いかもしれません。

 

 

ちなみに欧州へのスインプロイク錠の申請はまだ準備中です。

 

欧州での発売はまだまだ先と見込まれます。

 

 

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まとめ

 

スインプロイク錠は治療の対象になる方が限られていますが、その対象になるオピオイドを使っていて便秘に悩んでいる方へは朗報といえる薬です。

 

オピオイドはがんの痛みだけでなく体の様々な痛みへ幅広く使われるようになっているので、スインプロイク錠もこれから多くの方へ使われることが期待されます。


 

 

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